Photo by Tetsuro Yasunaga
規制緩和の反動とも見て取れる締め上げ志向の社会的風潮は、子どもの教育の現場にも「ポスト・ゆとり教育」以降の大きな歪みとなってあらわれてきています。
管理、監視、画一化といったキーワードは、オンブズマンや360°型評価指標といった柔らかな言い回しへとメタモルフォーゼしながら、本質的には「評価者としての他者」への配慮と、それに呼応する「あるべき自分の姿」をますます強迫する社会の形成を促しているような危機感を感じます。これは、トップダウン型の理念の強要とも違い、あたかも常識的で正当な価値観で子どもたちの周囲を取り囲むようなアプローチである分、なおさら危険な側面を有しているように感じます。
一方で、そのような危機感と通じたものかは分かりませんが、創造性や感性を育む機会を通じて、知識や戦略だけではカバーしきれない人間の領域を再獲得しようとするムーヴメントもまた、同じ社会の中で根を広げようとしているという事実もあります。そのひとつが、様々な形で行われているワークショップ型の教育/保育アプローチです。民・官・学から個人のアーティストまで、協議会*やNPO*など多様な形態を採りながら、様々な人々がコンテンツ作りや実施運営に横断的に関わるような広がりを見せ始めています。
ところで、こういった横断的な活動の広がりは、同時に問題の顕在化も促していくものです。つまり、ワークショップコンテンツという無形物を、コモンウェルスとしての純度を保ちつつ、いかに発案者の権利を保証していくかという議論です(もちろんここには、先述のムーヴメントを経済的にも機能させることを前提目標とした考え方が基盤にあるので、別の視点からすればまったくナンセンスな話にもなりえます)。
というのも、「ワークショップのアイデア、ノウハウ」という無形物は、現行の著作権で保護されていないという現状があります。1970年に制定された『著作権法』での著作者の権利保護は、絵画・彫刻・映画・音楽など「有形物」としてのアート作品(わかりやすくするために、ここではそう呼ばせてください)のみに適用されます。
けれども一方で、2002年には『知的財産戦略会議』が設置され『知的財産基本法』が制定されるなど、「思索により生じた文化的創作=独自性のあるアイデアやノウハウ」にも考案者の権利があり、それらを保護すべきだという考え方が公的に認知されるようになるなど、一応の発展も見ることができます。
そういう背景はあるものの、工作などの創作行為を行うワークショップイベントは、文化的な観点から「アート」の一種に分類されながらも、その内容がどれほどオリジナルであっても、無形である時点で著作権法の保護対象外のままです。そのため、文化的な観点での価値がいくら高まっても、有償化の判断や適正な対価の設定が難しいことから、経済/産業的な観点から知的生産活動として認められにくい状況が起こっています。
簡単に言うと、
・ワークショップを有料にすることの正当性が保障されていない。
・盗用されても今の法律では文句が言えない。
・やればやるほど貧乏になり、経済的損失を被るリスクが補填されない
ということが言えます。
このような問題を念頭に、アイデアという無形資産の価値が一般に正しく認知され、経済的な評価と安定した活動基盤を保てるような状況つくりを目指すのが、ワークショップ知財研究会です。WSの発案者、運営者、参加者がそれぞれの立場からクリエイティヴィティの保護とコンテンツの普及をどのように両立させていくかを議論するこの研究会 ー
前置きが長くなりましたが、その第3回公開研究会がもうすぐ開催されます。
『公開研究会 シリーズ3 「ワークショップとクリエイティヴ・コモンズ・ライセンス」』
日時 | 2009年2月7日(土) 13:30開会(13:00受付開始) |
会場 | |
定員 | 180名(先着順) |
主催 | |
協力 |
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※終了しました。